2020年11月3日 / 最終更新日時 : 2020年11月4日 wpchubu_adm 2020年度支部大会 長野県上伊那地方の谷戸における植食性甲虫類の群集構造と環境指標性永井修・大窪久美子 “長野県上伊那地方の谷戸における植食性甲虫類の群集構造と環境指標性” に対して9件のコメントがあります。 加藤久樹 より: 2020年11月9日 4:43 PM中田さんの質問の回答の派生になりますが従来の森林の環境評価ではどのような生物で行われてきたのでしょうか。返信 永井修(信州大・発表者) より: 2020年11月9日 10:23 PMご質問ありがとうございます。 本研究と同様の、昆虫類を指標として利用する森林環境評価の研究としては、チョウ類を対象とするものや地表性甲虫類(林床部で主に生活する昆虫類)などが挙げられます。 昆虫以外では土壌動物を利用する研究例などもあります。返信 中田小春 より: 2020年11月9日 8:17 AM植食性昆虫類群集の群集の層ごとの多様度がその土地の植生階層に影響されているものとありましたが今後植生階層の評価を行う場合に植食性昆虫の調査を合わせて行うメッリットがもしありましたらお教えください。返信 永井修(信州大・発表者) より: 2020年11月9日 9:56 AMご質問ありがとうございます。 まず、森林など生態系において環境評価を行う場合、植物の調査を行うだけでなくその環境に存在する生物や立地環境条件など多角的な視点から総合的に評価する事が重要であるとされています。例えばチョウ類では、出現する高さが植生の階層によらない事も多く(高木で発生する種がギャップの地表や草本の花に訪れる、等)、階層の発達した森林でも面的な評価が中心となる場合が多いように思います。植食性甲虫類の場合は階層毎に異なる群集がみられたため、面的な評価だけにとどまらず、より立体的に森林を捉える評価手法の一つとして利用できる可能性があると考えています。返信 佐藤由美 より: 2020年11月8日 10:22 PM植食性甲虫類について全く詳しくないので教えて頂きたいのですが、植食性甲虫類は年中出現するものなのでしょか。また今回伊那と割と標高が高い場所での調査だと思うのですが、標高が低いところでの植食性甲虫類での違いや今回との共通種などありましたら教えていただきたいです。返信 永井修(信州大・発表者) より: 2020年11月9日 2:20 AMご質問ありがとうございます。 植食性甲虫類の出現については、主に以下の2つの出現パターンによります。⑴秋に成虫が羽化し活動→成虫で越冬→翌春活動 ⑵夏に成虫が羽化し活動→卵や幼虫で越冬両者が合わさることで基本的に餌となる植物の葉が出ている期間(春から秋まで)は何らかの植食性甲虫類の活動する成虫を確認する事ができます。 成虫で越冬する種であっても、冬季は土の中や樹皮の下などに隠れていて活発に動く事はほとんどないため、本研究のような方法で調査をしても出現を確認できないものと思われます。標高差による植食性甲虫類の違いについては、基本的には標高の違いによる植生の変化に対応して植食性甲虫類群集にも違いが現れるものと考えられます。植物の分布、植生の差異ではなく純粋に標高差による影響を受けると思われるものとしては、ヤノナミガタチビタマムシという種が挙げられます。 本種はケヤキを寄主とし葉を食べる植食性甲虫類であり、ケヤキは伊那谷でも中央部の河川周辺から、本研究の調査地のような山地帯上部まで分布する樹種です。 ヤノナミガタチビタマムシは日本各地で極めて普通にみられる種ですが本研究においては数頭確認できたのみでした。 (以下は研究の調査ではないですが)調査地より標高の低い信州大学農学部周辺では一定の個体を確認できており、さらに標高の低い天竜川、三峰川の段丘林では多くの個体が発生しているのを確認しています。このように標高が下がるにつれて個体数を増す原因としては、ヤノナミガタチビタマムシが温暖な地域を中心に分布する種であることが考えられます。反対に寒冷地を中心に分布するもので逆の傾向を示す種もみられます。標高差に関わらず共通する種というのは、低標高地から高標高地まで広く分布する草本・木本を寄主としているような種である場合がほとんどです。 本研究において共通種群に含まれているような種のほとんどがそれに当たるものと思われます。返信 山下将司(信州大学) より: 2020年11月8日 10:36 AM的外れな質問かもしれないのですが、食植生甲虫を環境指標にする際に「寄主が特定の植物群・植物種に限られる」という要素がマイナスに働くことはないのでしょうか。特定の樹種さえ存在すれば環境が豊かとも読み取れるのではないかと思いました。返信 永井修(信州大・発表者) より: 2020年11月8日 1:08 PMご質問ありがとうございます。 言葉が足りず申し訳ありません、「寄主が特定の植物群・植物種に限られる」というのは植食性甲虫類全てが限られた(同一な)植物を寄主としている、というものではなく、植食性甲虫類が各種ごとに限られた植物種を利用しているという意味です。植食性甲虫類全体としてはシダ植物以上の幅広い植物を種毎に限定的に利用します。したがって、植物種が豊富であれば植食性甲虫類も豊富となる傾向がみられます。 また、寄主植物が限定されることで、寄主植物の在不在により甲虫群集に変化が生じやすく植生の変化に対応する環境指標としては有効であると考えています。逆に幅広い植物を利用する種である場合、様々な環境で出現する共通種となり、こういった種については環境指標として利用するのが難しいとは思います。 植生以外の立地環境との関係については今後考察を進める中で明らかにできればと思っています。返信 wpchubu_adm より: 2020年11月3日 11:04 AM氏名と所属を記入の上、コメントしてください。返信コメントを残す コメントをキャンセルメールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目ですコメント ※名前 ※ メール ※ サイト 次回のコメントで使用するためブラウザーに自分の名前、メールアドレス、サイトを保存する。 Δ
中田さんの質問の回答の派生になりますが従来の森林の環境評価ではどのような生物で行われてきたのでしょうか。
ご質問ありがとうございます。
本研究と同様の、昆虫類を指標として利用する森林環境評価の研究としては、チョウ類を対象とするものや地表性甲虫類(林床部で主に生活する昆虫類)などが挙げられます。
昆虫以外では土壌動物を利用する研究例などもあります。
植食性昆虫類群集の群集の層ごとの多様度がその土地の植生階層に影響されているものとありましたが今後植生階層の評価を行う場合に植食性昆虫の調査を合わせて行うメッリットがもしありましたらお教えください。
ご質問ありがとうございます。
まず、森林など生態系において環境評価を行う場合、植物の調査を行うだけでなくその環境に存在する生物や立地環境条件など多角的な視点から総合的に評価する事が重要であるとされています。
例えばチョウ類では、出現する高さが植生の階層によらない事も多く(高木で発生する種がギャップの地表や草本の花に訪れる、等)、階層の発達した森林でも面的な評価が中心となる場合が多いように思います。
植食性甲虫類の場合は階層毎に異なる群集がみられたため、面的な評価だけにとどまらず、より立体的に森林を捉える評価手法の一つとして利用できる可能性があると考えています。
植食性甲虫類について全く詳しくないので教えて頂きたいのですが、植食性甲虫類は年中出現するものなのでしょか。また今回伊那と割と標高が高い場所での調査だと思うのですが、標高が低いところでの植食性甲虫類での違いや今回との共通種などありましたら教えていただきたいです。
ご質問ありがとうございます。
植食性甲虫類の出現については、主に以下の2つの出現パターンによります。
⑴秋に成虫が羽化し活動→成虫で越冬→翌春活動
⑵夏に成虫が羽化し活動→卵や幼虫で越冬
両者が合わさることで基本的に餌となる植物の葉が出ている期間(春から秋まで)は何らかの植食性甲虫類の活動する成虫を確認する事ができます。
成虫で越冬する種であっても、冬季は土の中や樹皮の下などに隠れていて活発に動く事はほとんどないため、本研究のような方法で調査をしても出現を確認できないものと思われます。
標高差による植食性甲虫類の違いについては、基本的には標高の違いによる植生の変化に対応して植食性甲虫類群集にも違いが現れるものと考えられます。
植物の分布、植生の差異ではなく純粋に標高差による影響を受けると思われるものとしては、ヤノナミガタチビタマムシという種が挙げられます。
本種はケヤキを寄主とし葉を食べる植食性甲虫類であり、ケヤキは伊那谷でも中央部の河川周辺から、本研究の調査地のような山地帯上部まで分布する樹種です。
ヤノナミガタチビタマムシは日本各地で極めて普通にみられる種ですが本研究においては数頭確認できたのみでした。
(以下は研究の調査ではないですが)調査地より標高の低い信州大学農学部周辺では一定の個体を確認できており、さらに標高の低い天竜川、三峰川の段丘林では多くの個体が発生しているのを確認しています。
このように標高が下がるにつれて個体数を増す原因としては、ヤノナミガタチビタマムシが温暖な地域を中心に分布する種であることが考えられます。反対に寒冷地を中心に分布するもので逆の傾向を示す種もみられます。
標高差に関わらず共通する種というのは、低標高地から高標高地まで広く分布する草本・木本を寄主としているような種である場合がほとんどです。
本研究において共通種群に含まれているような種のほとんどがそれに当たるものと思われます。
的外れな質問かもしれないのですが、食植生甲虫を環境指標にする際に「寄主が特定の植物群・植物種に限られる」という要素がマイナスに働くことはないのでしょうか。特定の樹種さえ存在すれば環境が豊かとも読み取れるのではないかと思いました。
ご質問ありがとうございます。
言葉が足りず申し訳ありません、「寄主が特定の植物群・植物種に限られる」というのは植食性甲虫類全てが限られた(同一な)植物を寄主としている、というものではなく、植食性甲虫類が各種ごとに限られた植物種を利用しているという意味です。植食性甲虫類全体としてはシダ植物以上の幅広い植物を種毎に限定的に利用します。したがって、植物種が豊富であれば植食性甲虫類も豊富となる傾向がみられます。
また、寄主植物が限定されることで、寄主植物の在不在により甲虫群集に変化が生じやすく植生の変化に対応する環境指標としては有効であると考えています。逆に幅広い植物を利用する種である場合、様々な環境で出現する共通種となり、こういった種については環境指標として利用するのが難しいとは思います。
植生以外の立地環境との関係については今後考察を進める中で明らかにできればと思っています。
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