環境評価を目的とした長野県中南部地域におけるカミキリムシ科群集の比較

環境評価を目的とした長野県中南部地域におけるカミキリムシ科群集の比較” に対して10件のコメントがあります。

  1. 永井 修 より:

    興味深く拝見しました。
    2点質問させてください。

    ①調査手法について、
    3階層に分けての調査との事ですが、各層の調査量的な統一はどのように図られたのでしょうか?
    (層毎に時間を区切る、掬う回数を決める、など)

    ②考察の第3段階で、
    小沢川は種群IVの種数に富む→”日照条件の良好な”渓畔林という部分の繋がりが少し分からなかったので、この部分の考えをお聞きしたいです。

    カミキリムシの仲間は、花や土場などの誘引物があると基本的な位置から(高さ的な意味で)容易に移動してしまうのと思うので、下層や上層の結果にルート上の誘引物有無が強く影響して、その他の観点からの階層別群集比較を難しくしてしまうのかなという印象を受けました。

    一方でTWINSPANの種群分類表で各地点の「中層」のみに着目すると、「構内」とそれ以外で種群が全く重なっていないので、中層の枯れ枝など?の植生構造が調査地間のカミキリムシ群集の差異に強く影響しているとも見えて面白いですね。

    1. 吉田詞音 より:

      永井修様
      信州大学農学部の吉田です。
      返信が遅くなってしまい申し訳ございません。

      ご質問の内容につきまして、ご返答させていただきます。

      ①:全調査地で1.5 kmのルートを100 mスパン長で15分割しています。
      この15個全ての区間において、各層を上層、中層、下層の順で2セットずつ掬うように努めて、量的な統一を図っています。

      ②:ポスター内にて説明が不足しており、申し訳ありませんでした。
      烏川のオニグルミ林では、上層を二次林が優占する薄暗い中層のオニグルミ林から、アラゲカミキリ族など枯れ枝を利用する種群Ⅱが多く得られました。一方小沢川では、日当たりの良い高木のオニグルミ上層から、葉を後食する種群Ⅳのトホシカミキリ族が多く得られました。
      以上の結果から、2調査地間のオニグルミ林の違いは日照条件だと捉えて、種群Ⅳが小沢川の良好な日照条件を示唆していると考えました。今後、相対光量子束密度との相関を検証してより確かな評価を行いたいと考えています。

      私も各層の誘因物の存在については課題だと考えています。
      例えばトラカミキリ族の多くは、土場や広葉樹の各種花に誘因されてしまうため、今回の調査でも一部各層に分散している様子が見られました。ハナカミキリ亜科の種類についても、烏川でガマズミやカンボクの花に集中する様子が観察されました。
      今後の展望として、本科群集を利用した環境評価指数の開発を考えていますが、各種誘因物に集まりやすい種群を重み付け等で処理する必要があると考えています。

      中層につきましては、単一の植生内でも
      枯れ枝、蔓溜まり、伐採木の有無などで本科群集の多様性に変化が及んでいることが示唆されたため、今後は林分内で間伐の有無を評価する指標などに結びつけていきたいと考えています。

      説明が長くなってしまい申し訳ございません。

      1. 永井 修 より:

        丁寧にご説明いただきありがとうございます。考察に関する理解が進みました。

        調査方法についてもよく分かりました。大変な調査だったと思いますが、3階層に分けた意味がしっかり感じられる結果になっていて素晴らしいなと思いました。

        今後の展望などに関してもまだまだ考えがあるようで、いろいろな方向に分析できる可能性を秘めていそうですね。

  2. 吉田詞音 より:

    本間政人様
    信州大学農学部の吉田です。
    ご質問ありがとうございます。

    種群Ⅵの調査地毎の特徴につきまして、

    構内は土場を利用するトラカミキリ族、モモブトカミキリ族、ヒメスギカミキリが優占するという特徴が見られました。

    小沢川は下層から得られた個体数が極端に少なく、特徴が見られませんでした。

    烏川は、草地環境のショウマ類の花から、マルガタハナカミキリを始めとする、ハナカミキリの仲間が多く出現するという特徴がありました。

    以上をまとめると、
    構内下層:伐採木を利用する種が優占
    烏川下層:ショウマの花を利用する種類が優占
    という特徴が見られる結果となりました。

  3. 田島尚 より:

    興味深い発表ありがとうございました。
    群集が距離的な遠近でなく、植生や立地環境の類似性に
    沿って類似していること、階層構造による種群の違いについて
    理解できました。

    一点気になったのは土場の扱いです。
    土場は繫殖活動等でカミキリムシが集まりますが、人為的な環境であり、
    本来では立ち枯れ等を利用する種でも土場があれば利用します。
    階層構造の違いを評価する上で、今後、土場の取り扱いについて何かお考えであれば
    教えて頂けたら幸いです。

    1. 吉田詞音 より:

      田島尚様
      信州大学農学部の吉田です。
      ご質問ありがとうございます。

      ご指摘の通り、土場と立ち枯れではどちらも同じ種群が利用することが懸念されます。

      そこで、枯死した木質組織を利用する種群に対して、産卵場所の嗜好性に着目した重み付けを行いたいと考えています。

      本研究では、種群Ⅱや種群Ⅵが土場や立ち枯れを利用すると考えられます。

      種群Ⅱのアラゲカミキリ族の仲間は、枯死した細い枝で得られるケースが多い一方で、種群Ⅵのトラカミキリ族の仲間は、玉切りされた土場の太い材から多く得られました。

      今後これらの有意性を検証して、族単位で重み付けを行うことで、土場性の種群を確立させて評価を行いたいと考えています。

      長い説明となってしまい、申し訳ございません。

      1. 田島尚 より:

        吉田様

        ご丁寧なご回答感謝致します。

        大学構内は色々な立地環境が隣接して存在することで、
        カミキリムシの多様性は高いですが、一方で園芸樹の植栽等
        人為的な環境も多く、難しいですよね。
        (そこが面白くもありますが。)

        種によっては採餌する植物と寄主となる植物が異なる場合もあると思いますので、このような点も研究でうまく説明できたらすごいです。

        今回の調査では階層ごとのスウィーピングと踏査大変お疲れ様でした。
        結果について、とてもわかりやすかったです。
        今後の研究についても期待しております。頑張ってください。

  4. 本間政人 より:

    大変興味深い発表ありがとうございました。
    一点質問させてください。
    TWINSPAN解析の種群VIについて、3地点の下層に特徴的な種群ですが、各地点毎の特徴はあったのでしょうか。
    ご教示いただければ幸いです。
    よろしくお願いいたします。

    1. 吉田詞音 より:

      本間政人様
      信州大学農学部の吉田です。
      ご質問ありがとうございます。

      こちらの不手際で返信となっていなかったため、再送させていただきます。大変失礼いたしました。

      種群Ⅵの調査地毎の特徴につきまして、

      構内は土場を利用するトラカミキリ族、モモブトカミキリ族、ヒメスギカミキリが優占するという特徴が見られました。

      小沢川は下層から得られた個体数が極端に少なく、特徴が見られませんでした。

      烏川は、草地環境のショウマ類の花から、マルガタハナカミキリを始めとする、ハナカミキリの仲間が多く出現するという特徴がありました。

      以上をまとめると、
      構内下層:伐採木を利用する種が優占
      烏川下層:ショウマの花を利用する種類が優占
      という特徴が見られる結果となりました。

      1. 本間政人 より:

        ご回答いただきありがとうございました。
        良く分かりました。
        カミキリムシ類の群集が垂直、水平的に異なっていることはとても面白いですね。
        環境指標としても、有用な特徴だと思います。
        同じ地域内でも解析していくと、カミキリムシ類の環境指標としてのスケールもみえてくると思うので、面白いと思います。
        これからも頑張ってください。

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